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厚生労働省はアニマルウェルフェアの入り口手前。衆議院で堀越議員、串田議員が連携強化訴える

厚生労働省はアニマルウェルフェアの入り口手前。衆議院で堀越議員、串田議員が連携強化訴える

2021年2月25日衆議院予算委員会第5分科会では、これまでもずっと畜産動物のアニマルウェルフェアに取り組んできた堀越啓仁議員(群馬)が、食鳥処理場でのアニマルウェルフェア改善を訴えた。

これまで厚生労働省は、委員会の中で「アニマルウェルフェアは環境省」であることだけを述べ、対応を避けてきた。しかし2020年施行の動物愛護管理法では、衛生部局との連携強化が新たに盛り込まれ、またそもそもどの場所であっても動物虐待は違法であることは当然のことであり、自分たちが管理する場所で起きている残虐な行為を適正化していく責任は所管する省庁にこそある。

これまで、廃鶏の長時間放置の問題、堀越議員は度々取り上げ、農林水産省、厚生労働省から通知も出させてきた。しかし、実際にはこれらの問題は解決していない(長時間放置最新情報)。厚生労働省は2018年には抜き打ちを含めた調査もしているが、その調査を受けて翌年再度通知を出しているものの、改善されたかも確認せず、それ以来、なにも対策を打っていなかったことが答弁により分かった。

屠殺場

また、頸を切ることに失敗して毎年約50万羽が生きたまま熱湯に入れられて茹で殺されている問題についても環境委員会等で堀越議員が取り上げ、また初鹿元議員が厚生労働委員会で取り上げてきたが、これも改善が見られているとは言えない。最新の統計が新型コロナウイルスを理由に発表されていないため、採卵鶏の屠殺の結果肉用鶏の屠殺の結果が最新であり、50万羽が生きたまま熱湯に入れられ、生体反応で皮膚が真っ赤になった状態で死亡している。この恐ろしい蛮行にも、やはり厚生労働省は取り組みを説明できなかった。つまりやっていないのであろう。

堀越議員は、これらの解決策としてガススタニングを提案し、日本の食鳥処理の遅れを指摘した。

日本の食鳥処理場ではスタニングすらしていない状態で先程からお話させていただいているような状況が起こっていると。これはですね、アニマルウェルフェア的には50年くらい諸外国と比較すると後退しているような状況があるんだろうと思っています。

さらに、アニマルウェルフェアについて環境省との連携をもっと取るべきであると、田村厚生労働大臣にアニマルウェルフェアの対応を迫った。

アニマルウェルフェアというと環境省が所管になり、厚生労働省所管じゃないといわれるかもしれませんが、でもこの食鳥処理場に関してはですね、このアニマルウェルフェア確実に厚生省が管轄になるわけですから、ぜひ連携をしていただきたいというふうに思っております。

ガススタニング、なにがいいかというと、動物にとって苦痛を与えないということだけではなくそこで働いておられる方々の労務負担の軽減にもつながる、精神的負担の軽減にもつながる。当然気絶されているわけですから、気絶した状態で吊るすということになれば、これはもう精神的ストレス確実に減らすことができるということもまず1点。それから実は肉の質も向上するということも言われてるんですね。なのでそういったところの観点からも非常に有用なんじゃないか。それから今、先程もお話させていただいたとおり、ネックカットに失敗して放血不良になって食品の適切性ということから除外されてしまう、食品として流通できないという今現状の形で作っている50万羽、それがロスを生むわけですよね。これが確実に減らすことができるということであると考えています。

そこで伺いたいんですが、生きた動物を扱うという点に置いては食鳥処理場もアニマルウェルフェア取り入れていくべきだというふうに思っております。田村大臣、どうかその点についてお考えを伺わせていただければと思います。

田村厚生労働大臣は、ガススタニングについては、放血さえ十分にできれば問題ない旨を示した。
これはアニマルウェルフェアを推奨する内容でもなく、また相変わらず厚生労働省は、鶏の体から血が抜けてさえいれば殺し方はどうでもいいといっているようにも聞こえる。これまでも衛生面だけしか関心がないことを厚生労働省は冷たく言い放ってきたわけだから、驚くことではないかもしれない。しかし、おそらく自身も食べている動物たちの体である。どれだけ苦しめたのか、血が抜けているかどうかだけでなく、アニマルウェルフェアは厚生労働省とは関係はあるのだ。田村大臣はこう続けた。

アニマルウェルフェアという観点は言われているとおり動物愛護法ですから環境省という形ではありますけれども、厚生労働省もいかに環境省とタイアップできるかという点は色々と検討していきたいと思います。
今ちょっと調べてみますと、平成30年8月時点でガススタニングを採用したとしている施設は1施設存在ということを確認したとのことであります。
これ、ガス室を設けるでありますとか、屠殺のライン変更があるので、経費がかかるという問題もあるようでありますけれども、いずれにいたしましても、たとえば環境省にアニマルウェルフェアの観点からの取り組みを聴取たりでありますとか、食品衛生の、先程委員おっしゃられましたけれども、そういう部分でどれほどこれがいいんであるのか、こういう事も含めてですね、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

厚生労働省が、アニマルウェルフェアの入り口にも立っておらず、知識もつけていないのであろうことがバレてしまう答弁だが、少なくともここで連携を明言しており、それは高く評価したい。屠殺のアニマルウェルフェアは、非常に重要である。

コンテナから乱暴に掴みだされ、意識のあるまま逆さ吊りにされ、必死で逃れようとバタつく中で頸を切られ、バタつく中で動けないように痛みのある電気ショック(意識を失わせているわけではない)を与えられ、2分以上そのまま苦しみ、それでも血が出きらずに、62度の熱湯に頭から入れられ、やけどしながら溺死するるのだ。

一方で、コンテナごとチャンバーに入れられ、徐々にガスが充満して意識を失い、意識のないまま頸を切られ死亡することとは結構な違いがある。どちらも完璧ではないし、悲劇でしか無いが、痛みを抑えようとする行為は、当たり前に行われなくてはならないのだ。なぜ年間8億羽の鶏たちの苦しみを無視できるのか、私達には理解できない。衛生だけだと述べて思考停止し、一切努力もしようとしない姿勢も理解できなかった。堀越議員と田村大臣の言葉を重く受け止め、厚生労働省はアニマルウェルフェアを学ばなくてはならない。

厚生労働省の見解に驚き!!!

さて同日の第6分科会では、環境大臣が農林水産省と産業動物のアニマルウェルフェアについて連携していくことを強く述べたのち、串田誠一議員(神奈川)が連携のもう一つの先、厚生労働省についても強く連携を求めた。

これ農水省だけでなくて厚労省の食鳥処理に関しても、屠殺の仕方に関しても人間の衛生面だけが法律に書いてあるんですね。これはアニマルウェルフェアの考え方は苦痛を与えないということが一番大事であって、それは環境省の指針には書いてあるんですよ。ところが厚労省の「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」に関しては、この規定が入ってないんです。

ここが、世界の評価として最下位になってしまっている部分なんですよ。ですからこういう指針を、農水省だけじゃなくて厚労省のところにも活かしていくという連携がやはり必要だと思うんですが、厚労省との間の連携もお願いできませんでしょうか。

山本厚生労働副大臣が以下のように答弁した。その内容は衝撃である。

今委員からご指摘ございました鶏の屠殺方法につきましては、放血を十分に行える方法であれば食品衛生の観点から問題はなく、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律 第15条でございますけれどもこの中には、食鳥処理場における鶏の屠殺方法は特段定められていないという状況がございます。ただ一般的には鶏の頸を切断して即死させ、放血させているため、結果的には苦痛を最小限にした方法で屠殺していると考えられます

え?!意識の喪失をしないまま頸を切ることが、苦痛を最小限にした方法だって?!

串田議員は「それが現実には行われてないんです」と否定したが、この議論はここまでとなったが、副大臣の答弁、聞き捨てならない。厚生労働省の「一般的」と述べた方法が、あらゆる国で違法な方法であることをまずは指摘しなくてはならない。

厚生労働省にこの真意を尋ねたところ、「頸を切断して即死」は言い飛ばしてしまったのか、首の血管を切断して急速に放血して意識を喪失しながら死に至るということだという。首を切ったことが即死ではないことは認めたものの、苦痛を最小限にした方法である点は否定しなかった。血管をスパっと切れば血液が急激に放出されて脳が酸欠になるため意識が喪失するため苦痛は最小限にできているというように認識しているようだ。

これは事実ではない。

むしろ逆である。急速な失血によって動物を殺すことを意図した切断は、組織損傷を知覚するための防御侵害受容系を激しく活性化し、動物に痛みを感じさせる。内因性オピオイド誘発鎮痛は、屠殺中では起こらないことが多い。その結果、喉の切断中に動物が極度の痛みを感じる危険性が高い。咽頭が切られた動物がまだ意識している間に、動物が不安、痛み、苦痛および他の苦しみを感じることができる。*1

自発的脳波反応がなくなるまでの時間は、2本の頸動脈切断場合60秒、1本の頸動脈切断で122秒、2本の外頸静脈切断で185秒、1本の外頸静脈切断で233秒かかることもわかっている*2。頸動脈の切断のみの屠殺は、死への時間を⻑引かせると英国農業·⾷品産業技術総合研究評議会(現バイオテクノロジー·生物科学研究会議)が述べている。

どの動物も、全て首を切る前に意識を失わせなくてはならないのはもう議論の余地もないほど常識である。堀越議員が述べたように50年、いやおそらくそれ以上に遅れているとしか言いようがない。気絶処理なしの屠殺を禁止しているEUは、2019年にはその他にどのような苦しみ痛みが鳥たちを襲っているのか91ページにも渡る詳細な調査レポートを作成し、更に改善させようと努力をしている。この違いは何なのか。日本の産業が取り残されるのは当然と言える。

さらにいえば、一般的と言い放ったレベルが日本の中でも低すぎる。日本国内でも電気水槽での意識喪失を行っている業者は少なくとも17はあるし、3業者はガスを取り入れている。低いレベルに合わせた答弁は、より一層日本の産業を傷つけるだろうし、鶏たちの苦しみを長引かせるだろう。

*1 EFSA “WELFARE ASPECTS OF ANIMAL STUNNING AND KILLING METHODS”
*2 Gregory and Wotton, 1986. https://books.google.co.jp/books?id=MpGkAgAAQBAJ&pg=PA84&lpg=PA84&#v=onepage&q&f=false
*3 英国農業·⾷品産業技術総合研究評議会(現バイオテクノロジー·生物科学研究会議)1984年報告

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