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ヒルズ アニマルウェルフェアコミットメント発表 ペットフードの課題

アメリカのペットフードメーカー ヒルズ(Hill’s Pet Nutrition,Inc.)は、日本では獣医師が処方する療法食として、犬猫などペットを飼育する人にはなじみがあると思います。今年2025年に全米・全欧を中心に、同社のアニマルウェルフェアに関する将来的な取り組みについてコミットメントを発表しました。

その内容に鑑み、日本での状況がどのように変化するのかを同社の日本支社にあたる「日本ヒルズ・コルゲート株式会社」に、アニマルライツセンターが問い合わせたところ、日本も本国・本社に方向性と同様に、アニマルウェルフェアに前向きな変化をもたらすため、グローバルサプライチェーンと継続的に協力していく都いう回答を得ました。

(日本ヒルズ・コルゲート株式会社からの回答全文)

ヒルズ・ペットニュートリションでは、倫理的で責任ある動物福祉の慣行を推進するため、原材料の調達に力を入れています。
原材料の透明性を高め、グローバルサプライチェーン全体で家畜動物の福祉を改善するため、動物福祉に特化した専任の動物福祉委員会を設置し、進捗状況の管理を行っております。

日本で販売している製品の大半を製造しているヨーロッパでは、原材料のサプライチェーンが進化し、家畜動物の福祉向上をさらに推進できる体制が整っております。
ヒルズのUKサイトに掲載されております「家畜動物の福祉に関する声明(Farm Animal Welfare Statement )」では、EUのサプライチェーンにおける多くの取り組みと進捗状況を詳しくご紹介しています。
2024年以降、ヨーロッパで生産される製品には100%ケージフリー(平飼い)の卵を使用しており、また、2030年までにヨーロッパで使用する鶏肉原材料の100%を「ヨーロピアン・チキン・コミットメント」の基準に準拠するサプライヤーから調達することを新たに約束いたしました。
ヒルズは、ヨーロッパ全域でこの取り組みを率先して行った最初のペットフードメーカーです。
さらに、グローバルなサプライチェーン全体で動物福祉における透明性を確保し、ペットのために高品質のフードを製造するため、定期的に包括的な監査を受けている認証済みサプライヤーからのみ原材料を受け入れています。
米国およびEUの規制では、すべての原材料のトレーサビリティ(追跡可能性)が義務付けられており、規制当局からはこの情報の提供を定期的に求められております。
ヒルズの品質および安全性プログラムは、米国およびEUの規制、各国固有の法律、そして動物福祉における科学の進歩と最良の取り組みを考慮に入れています。
ペットフード業界全体として、動物福祉の持続可能で永続的な向上に貢献することが重要であると考えております。
サプライチェーンの改善には時間を要しますが、ヒルズは動物の人道的な扱いにおいて意義ある前向きな変化をもたらすため、グローバルなサプライネットワークと継続的に協力していくことをお約束いたします。
ヒルズでは、製品で使用する他の原材料についても動物福祉に関する調達基準を現在策定中であり、責任ある動物福祉への取り組みに関する情報を将来的に共有できるよう、事業を展開しているすべての国のウェブサイトを更新する作業にも取り組んでおります。

現状、日本国内で販売されているヒルズのフードの原産国はチェコ・オランダ・アメリカです。その中でケージフリーやブロイラーのアニマルウェルフェア課題を抱える原産国はアメリカのみ。したがって同社からの回答からも欧州産のフードに関しては、2024年以降ケージフリー、2030年にヨーロッパチキンコミットメントに移行することが約束されているということです。アメリカ産に関しては本国の移行状況に準ずるということになりますが、アニマルウェルフェアの取り組みをウェブサイトに公開するとも約束されているので、国際的シェアのペットフードの中では、同社のフードのアニマルウェルフェアが最も進んでいるということがいえます。

この件について、アニマルライツセンターの活動に様々なサポートをいただいている平林雅和獣医師(オールペットクリニック院長)から、以下のコメントをいただきました。

ヒルズ・ペットニュートリション様が発信された声明、大変心に響きました。特に注目したのは「EU全域で採用」「2024年からケージフリー卵を100%使用」「2030年までに鶏肉をEuropean Chicken Commitment準拠サプライヤーから調達」という約束が、業界で初の取り組みだと明言されている点です。

動物福祉に対する透明性と責任を伴う姿勢に、深い敬意を表します。

話は変わりますが、私たち獣医師への教育・研究連携の例も印象的です。米カンザス州立大学の獣医学部に対し、ヒルズ社が5年間かけて100万ドルの常任教員ポジションを創設し「臨床栄養教育」を推進している取り組みは、獣医師教育の質を革新する大きな一歩です 。これにより栄養学だけでなく、アニマルウェルフェアの概念もインストールされるのだと期待し、将来的な啓発と技術普及への投資として、驚きと感動を覚えます。
持続可能な変革として業界を先導し、動物と人との関係をよりよいものにしていく原動力になると感じます。アニマルウェルフェアへの情熱をお持ちの皆さまにとって、ヒルズ様のこうした具体的取り組みは確かな希望の灯であり、今後の進展情報を心待ちにしております

これまでもアニマルウェルフェア関する国際認証のついたペットフードが日本で販売されたことはありましたが、数年でライセンスが終了して、持続性のある展開は存在しませんでした。また、希少すぎたり、価格があまりに高いフードも多くの飼い主の賛同を得ることはできなかったのです。その意味で国際的シェアを誇るヒルズ社の取り組みから、日本の犬猫飼育者は、フードの質がよくなる以上の、2つの重大なインパクトを受けるべきだとおもいます。

1つは、現時点で自宅のあるすべての食べ物の中で、輸入品であるヒルズのペットフードが最もアニマルウェルフェアのバランスがよい現実を認識して、そこに問題意識を持つこと。もちろん人間の食べ物でも輸入食品であれば、アニマルウェルフェアのレベルが全体的に高い可能性はあります。しかしそれは日本ヒルズ・コルゲート社にあたる日本の商社がはっきりと公表しないかぎり、国際水準とはいえないのです。日本のすべての商社、輸入業者は、輸入品のアニマルウェルフェアトレーサビリティの結果を公表すべきで、消費者はそれを求めるべきです。

2つめは、犬猫を家族と考え、動物の命の大切さを理解する飼育者だからこそ、畜産動物の苦しみに対して相応のコストを払う意識を、当然持つべきだということ。そのために最初にすべきなのは、アニマルウェルフェアが守られているフードでペットを飼育するのが最低限の条件だから、そこがはっきりしないフードメーカーに対して公開を求める姿勢を持つということです。畜産の問題を知ったた私たちは、ペットという動物のフードになる畜産動物がいるという矛盾から逃げてはいけないのです

昔からペットフードの原材料に関しては、さまざまな都市伝説な噂がありあますが、現実的に先進国および先進国に輸出されるペットフードに使用される畜産物は、人間の食材と同じサプライチェーン上で製造されています。そのためアニマルウェルフェアの活動の対象として早くから注目されており、全世界的に、犬猫の飼い主を巻き込んだ運動が起こっていました。その運動は「大変タフなものだった」と直接かかわった活動家は証言しています。しかし犬猫の飼い主、愛好家の支えもあり、この2025年に大きな成果をえたのです。ヒルズは日本には工場のない完全輸入品ですが、国内にはとくに国産原料を使うペットフードには人間の食品同様のアニマルウェルフェアの課題があります。その改善の運動はさらにタフになりそうですが、もとより飼育者であれば、立ち向かわないわけにはいきません。

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