ブロイラーの趾蹠皮膚炎(FPD)

2017/09/14

ブロイラーにおける趾蹠皮膚炎(FPD:Footpad Dermatitis)は、動物福祉の指標のひとつとされています。
FPDの発生率は、敷料の質が良いか悪いか、飼養密度が高すぎないかどうか、ブロイラーの品種が適切であるか*ということまではかるモノサシになります**。

日本におけるブロイラーのFPDの発生状況調査***によると、「FPDは調査した全ての鶏群で観察され、一部の鶏群では全ての個体にFPDを認めた」など広範囲にわたり、高率にFPDが発生していると報告されています。

PFDの発生要因には、床状態の悪さ、飼育密度の高さなどがあります。FPDが重度になると、鶏は疼痛による歩行困難、発熱ストレスに苦しみます。趾蹠と炎症が深刻な場合、歩行困難になったり、二次感染をも起こし得ます。
 
*ブロイラーは短期間で少しでも大きく成長するということに特化した品種改変が繰り返されているため、病気になりやすいという問題を抱えています。
**参照:OIE基準 ANIMAL WELFARE AND BROILER CHICKEN PRODUCTION SYSTEMS

***「わが国のブロイラー鶏における祉蹴皮膚炎の発生実態に関する研究」橋本信一郎2011 
 

調査

2017年5月22日に、国産ブロイラーのモミジ(鶏足)合計6kg(1袋3kg)を注文し趾蹠皮膚炎(FPD)の状況について観察しました。
その結果、178本の鶏足のうち105本に趾蹠皮膚炎(FPD)が認められました。

炎症ゼロが73本(写真左)
軽度の炎症が79本(写真中)
重度の炎症が26本(写真右)




*右に行くほど炎症度合いが大きくなります。
*Welfare Quality Assessment protocol for poultryを参考にし、スコア1、スコア2を「軽度の炎症」、スコア3、スコア4を「重度の炎症」として独自に判断しています。
*処理後の鶏足のため、外皮は剥けてしまっており、実際の炎症度合いとは異なる可能性もあります。
*写真はすべて2017年5月25日に撮影


■重度の炎症と判断したもの






■軽度の炎症と判断したもの








■炎症ゼロと判断したもの

評価

購入先に確認したところ、購入した6kgの鶏足はすべて同じ国内の大手食肉企業A社の生産農場のものでした。
グローバルGAPでの評価
まず”国際的に安全管理の評価を得ている農産物”であるということを認証する「グローバルGAP認証」の基準*を元に、A社を評価してみます。グローバルGAP認証では、食鳥処理場での鶏の足裏の病変をチェックし罹患率を記録することが必須条件となっています。そして福祉指標として鶏の足の裏の病変(Footpad lesions)は30%以下が推奨されています。
A社の場合、178本中105本に病変があるため59%となり、グローバルGAPの福祉指標にてらすと改善が必要なレベルであることが分かります。

Poultry Checklist>The GLOBALG.A.P. Poultry Standard 
日本にもJGAPという畜産のGAP認証があります。しかしアニマルウェルフェアについては「チェックリストをチェックすることだけ」が求められており(チェックリストの成績が悪くてもチェックリストを付けていれば認証をうけることができる)、数値規定もなくアニマルウェルフェアを担保できるものになっていないため、グローバルGAPの基準を採用しました。

 
Global Animal Partnership’sでの評価
つぎに同じ「GAP」でも動物福祉に重点をおいたGlobal Animal Partnership’sの認証を元にA社を評価します。Global Animal Partnership’sでもグローバルGAPと同じく足裏の炎症(Footpad Dermatitis)のモニタリングが必須条件となっています。Global Animal Partnership’sでは認証がステップ1~ステップ5まであり、それぞれのステップごとにFPDの罹患率の上限が明示されています。上限を超えると承認されません。

Global Animal Partnership’sのFPDの基準
20を超えてはならない ステップ1
15を超えてはならない ステップ2
10を超えてはならない ステップ3~5

数値はFPDを評価する計算式*から導き出されたものです。この計算式でいくと、A社は68となり、ステップ1の基準も満たすことができないということになります。

*(# of feet scoring ‘0’ x 0) + (# of feet scoring ‘1’ x 1) + (# of feet scoring ‘2’ x 2)

これらのことから、A社のブロイラーの福祉状況は低く、改善が必要だと言えるのではないかと思います。


FPDを予防するためにはどうすれば良いのか?

敷料
FPDは皮膚表面が長期にわたり湿った敷料に接触することによって起こります。まず一番重要なのは、敷料を良質に保つための管理です。日本のブロイラー養鶏で敷料を交換している農場はわずか3.5%*。ブロイラーの鶏舎ではほとんどの場合、ブロイラーが出荷されるまでの1カ月半ほど敷料が交換されません。敷料を変える予算的余裕がないのであれば、まめに攪拌する、敷料を追加するなどの処置が必要です。それでも敷料の質を改善できないのであれば、出荷前であっても敷料を交換するしかありません。
飼養密度
日本のブロイラーの飼育密度は高く、EU規定の平均1.4倍、最大で1.78倍にもなっています。
一羽当たりの面積が狭ければ、その分敷料も汚れますので、過密飼育を避ける必要があります。
止まり木、照明、乾草の設置
止まり木があれば、止まり木に止まっている間は敷料との接触がなくなります。
また、鶏は光度が低いところで休息する習性があるので、一か所に固まってしまわないよう照明が全体に均等にいきわたるようにすることも敷料の質を良好に保つ効果があります**。
東北大学の小原愛氏の「日本のブロイラー生産における福祉的飼育法の提案(2015)」では、籾米配合飼料の給与と照明の暗期の設定***もFPD防止に効果があるという研究結果が示されています。

その他、換気・温度管理、給水設備の管理などもFPDに関連してきます。

*ブロイラーの飼養実態アンケート調査報告書 (2014)
**参照元:Management Tools to Reduce Footpad Dermatitis in Broilers By: Dr. Ingrid de Jong & Ing. Jan van Harn
***EUではブロイラー鶏舎における暗期の設定が義務付けられていますが、日本にはそのような規制はありません。多くの養鶏場で「たくさん食べさせて太らせる」ために24時間照明を点灯し続けるという方法がとられており、動物福祉上大きな問題となっています。

 

ブロイラーのFPDのスコアリング

飼育環境を改善するためにはまず、農場におけるFPDの発生率を知る必要があります。FPDの割合をモニタリングして採点する方式は、FPDを減らすのに有効だとされています。例えばデンマークではFPDのスコアリングを導入して以来、FPDの罹患率が激減しています。

【デンマークのFPD率の推移】*


※FPDのスコアリングが導入されたのは2002年
※赤いラインはデンマークのFPDの制限値


デンマークとスウェーデンでは、FPDのスコアが許容されるレベルを超えた場合、罰金刑に処せられます*。また諸外国では、ブロイラーの飼育環境を改善させるために、食鳥処理場でFPDの割合をカウントし農家にフィードバックするという方法を自主的にとっている企業もあります。
ブロイラーのOIE基準**でも、ブロイラーの福祉の状態を測り得るPFDの値を、決定することが推奨されています。

国内でも、農水省が普及に努めている「アニマルウェルフェアの考え方に対応したブロイラーの飼養管理指針」に「食鳥処理場等で接触性皮膚炎をチェックすることがアニマルウェルフェアの状態を確認するために有用とされている。」と記載されています。
JRAの交付事業として2014年から2015年にかけて実施された『アニマルウェルフェア専門家養成事業』において作成された「アニマルウェルフェア技術研修会テキスト~ブロイラー~」ではFPDの評価基準及びチェック方法についての詳細も掲載されています。
しかし実際に日本でそのような取り組みをしている例を、私たちは知りません。

スタニング無しの屠殺さえ問題視されていない日本では畜産動物福祉の取り組みがとても遅れており、FPDのスコアリングシステムの整備というところまでとても行きついていないという状況です。

*参照元:Management Tools to Reduce Footpad Dermatitis in Broilers By: Dr. Ingrid de Jong & Ing. Jan van Harn
**参照:OIE基準 ANIMAL WELFARE AND BROILER CHICKEN PRODUCTION SYSTEMS
 

病変部位を市場に出してもよいのか?

通販サイトでは多くのもみじ(鶏足)が低価格で販売されています。商品の写真を掲載しているサイトも数多くありますが、「重度の炎症」と思われるものも普通に販売されています。
炎症部分の説明として「踏み固まったものの付着あり」「足裏汚れあり」「このような部分がついていますが品質に問題はございません」などと説明書きしているサイトもあります。
しかしこの部分は汚れではなく病変です。病気の部分を食品として販売してもいいのでしょうか?
食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律
【食鳥検査】
屠殺する鶏の検査方法については第十五条に定められています。
  • 食鳥処理業者は、食鳥をとさつしようとするときは、その食鳥の生体の状況について都道府県知事が行う検査を受けなければならない。
  • 食鳥処理業者は、食鳥とたいの内臓を摘出しようとするときは、その食鳥とたいの体表の状況について都道府県知事が行う検査(以下「脱羽後検査」という。)を受けなければならない。
  • 食鳥処理業者は、食鳥とたいの内臓を摘出したときは、その内臓及び食鳥中抜とたいの体壁の内側面の状況について都道府県知事が行う検査(以下「内臓摘出後検査」という。)を受けなければならない。

そして、この三つの検査について、「次に掲げるものの有無について行うものとする」と書かれています。
  • 一  家畜伝染病予防法 (昭和二十六年法律第百六十六号)第二条第一項 に規定する家畜伝染病及び同法第四条第一項 に規定する届出伝染病
  • 二  前号に掲げるもの以外の疾病であって厚生労働省令で定めるもの
  • 三  潤滑油の付着その他の厚生労働省令で定める異常

厚生労働省令とは「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則」のことです。この施行規則第二十五条を読むと「厚生労働省令で定めるもの」「厚生労働省令で定める異常」に、「炎症」も含まれていることが分かります。つまりFPDの有無も検査対象となるということです。

【廃棄】
鶏の廃棄については第十九条に定められています。
  • (廃棄等)
    食鳥処理業者は、食鳥検査に合格しなかった食鳥、食鳥とたい、食鳥中抜とたい若しくは食鳥肉等又は第十六条第五項の厚生労働省令で定める基準に適合しない旨の同項の確認がされた食鳥、食鳥とたい、食鳥中抜とたい若しくは食鳥肉等について、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、消毒、廃棄又は食用に供することができないようにする措置を講じなければならない

この厚生労働省令で定められる措置も「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律施行規則」第三十三条に書かれています。これによると、「炎症(全身性のものを除く。)」については、「当該病変部分に係る肉、臓器、骨及び皮」は「廃棄等の措置」をする、とされています。

法律そのままであれば、PFDの部分は廃棄されるべきで、市場に出回ってはならないと読み取れます。

しかし実際にはA社のように、購入した鶏足の半分以上が炎症を起こしているという販売状況です。
この状況について食鳥処理場を所管する厚生労働省に確認したところ「判断は個々の食鳥処理場にゆだねられる」とのことで、法律上では「廃棄などの措置」であっても食品として市場に出るのが容認されている理由については不明でした。

A社への質問書

このブロイラーの足を生産するA社に本件について質問書を提出しました。
質問の内容は次の5点です。
  • ブロイラーの趾蹠皮膚炎(FPD)を防ぐための環境の整備を行っているか(止まり木の設置、敷料の管理方法など)
  • ブロイラーの健康状態を判断するための評価(歩様、損傷率など)を行っているか
  • 敷料の質の状態を判断するための評価(砂浴び羽数や羽毛の汚れ)をおこなっているか
  • 貴社食鳥処理場で趾蹠皮膚炎(FPD)の調査を行い、貴社生産農場にフィードバックしているか
  • 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律により、皮膚の炎症は廃棄対象にもなるものですが、貴社において鶏のモミジを廃棄対象とする基準を教えてください。

これについてのA社からの回答は「個別の案件には答えられない。」「うちのブロイラーの足だと確認できない」というもので、明確の答えが得られませんでした。業者との取引で「炎症レベルは○まで」などという取り決めはあるとのことです。しかしどう見てもFPDが重度と思われる鶏足まで販売されています。これほど重度であってもOKという取り決め自体が問題ではないかと思います。
 

趾蹠皮膚炎のニワトリ



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