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養豚で行われる「去勢」麻酔なし

日本のオス豚の94.6%が*1麻酔なしで去勢がおこなわれています。

去勢をするのは、肉の『雄臭』を防ぐためです。

雄の子豚は、生後1週間以内に、農家の人の手により外科的去勢(物理的に睾丸を除去)されます。
外科的去勢のやり方は、鋭利なカミソリでふぐり(陰嚢)を切開、睾丸を取り出し、一気に引き抜き、切り取る、というものです。基本的に麻酔は使われません(97.3%の農家が麻酔なしで実施*4)。
無麻酔で去勢されることで、心的外傷性疾患により死亡する子豚もいます。処置後に腹膜炎を起こして死亡したり、ストレスから発育や免疫力が落ちる傾向があることも知られています。
体の一部の切断は、切除時も、切除後も痛みが続きます。

写真/AnimalEquarity
動けないように足の間に固定された子豚。子豚に行われるのは去勢だけではない。尾の切断、さらに歯の切断も行われる。いずれも麻酔は使われない。

下の写真はhttps://andrewskowron.org/

生後数日の新生児のうちであれば神経が未発達なため痛みを感じないとする考えがいまだあるようですが、それは事実ではありません。年齢を問わず動物たちは痛みを感じることができます*2

『去勢直後の子豚は動きも少なく,ふるえたり足がぐらついたり滑ったり尾を激しく動かしたり,嘔吐する豚も見られたが,初めは皆横に寝そべったりはしないで,臀部の痛みが収まり始めてから横たわる。2~3日間これらの行動の変化のいくつかが引き続き見られることにより,痛みの持続期間を指し示した。』*3

*1 飼養実態アンケート調査報告書 http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/index.html
*2 Why Pain Is Still a Welfare Issue for Farm Animals, and How Facial Expression Could Be the Answer
*3 http://jp-spf-swine.org/All_about_SWINE/AAS/21/21_28-48.pdf
*4 https://www.hopeforanimals.org/pig/pigfarms-survey/

インプロバック

オスの臭いを消すには、こういった外科的去勢ではなく、免疫学的去勢製剤「インプロバック」により去勢と同等の効果をあげるという方法もあります。この方法では、子豚が心的外傷で死ぬことも腹膜炎で死ぬこともありません。
睾丸の除去による免疫力の低下も防ぐことができます。
食肉の残留検査で、検出されることもありません。
また投与後のオス豚は、外科的去勢オス豚に比べると自然なパターンで発育することができるため、飼料効率がよく、糞量も少なく、環境にやさしいそうです。ゾエティス・スペインの調査では「インプロバックの豚肉のほうが歩留まりが1.23%高かった」*という報告もあります。

インプロバックは、オーストリアでは、10年以上にわたって広く一般的に利用されています。
ニュージーランドやヨーロッパ各諸国でも使用されるようになってきています。ヨーロッパでおこなわれた市場調査では約70%の人が、「外科的去勢より、免疫学的去勢製剤摂取により生産された豚肉をのぞむ」と答えています。

いっぽう、日本では2010年にこのワクチンが認可されていますが、使用する農家がいない状況です。

*雑誌「養豚情報」(2017.7)参照

雄臭?

また本当に”雄臭”が問題になるのか?という問題もあります。オスが性成熟に達するのは7ヶ月ごろ、一般的に豚が出荷されるのが6ヶ月ごろであることを考えると、問題ないと考えられます。現に性成熟に達する前に出荷するイギリスとアイルランドは去勢を行っていません。日本でも去勢豚と未去勢豚の「食べ比べ」が行われています。

2015年11月29日に開催された“「アニマルウェルフェア」を考える~豚の去勢について”では来場者45名に対して、どちらが未去勢肉であるか知らせずにA(去勢豚肉)とB(未去勢豚肉)の食べ比べが行われた。結果、もも肉についてはAが未去勢豚肉だと答えた人が16名、Bだと答えた人が24名、分からないと答えた人が5名であった。ロース肉については、Aが未去勢豚肉だと答えた人が10名、Bが26名、分からないと答えた人が9名という結果であった。
いずれの場合も「まずくて食べられない」などという意見はなく「独特の風味があって未去勢豚肉のほうがおいしい」という意見もあった。(参加者のレポートより)

子豚のうちに去勢すれば痛みが少ないのか?

アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針では「去勢は、子豚への過剰なストレスの防止や感染症の予防に努めつつ、生後7日以内に実施することとする。」とされています。

しかし、早めに去勢をしても遅めであっても、いずれの場合も豚の苦痛度に変化がないという研究*報告があります。何日齢であっても豚は苦しむのです。

*1 Behavioural responses of piglets to castration: the effect of piglet age.2001 Jul 2;73(1):35-43.

諸外国の状況

EU全体の状況

EUでは2012年以降、外科的手術には麻酔が必須とされ、2018年以降は、外科的手術による去勢が禁止*。
今後EUでは免疫学的去勢製剤(インプロバック)使用と性成熟前の出荷(つまり雄臭が出る前に出荷して去勢をしない)の両方の方向に進んでいくのではないかと考えられます。


(表の引用元:* alic 2017年8月号 EUの養豚・豚肉産業~多様な産地と経営体~

またEUは海外の豚肉輸入時に豚の去勢について制限を設けていることがあり、たとえば、TTIP及び南米南部共同市場においては豚の去勢について交渉中であり、ブラジルについては、ブラジル産豚肉の50%が免疫学的去勢を受けた豚であるか、EUに輸出される豚肉は免疫学的去勢または無去勢の豚肉でなくてはならない、などの決まりをつくっています。

◎無去勢オス豚の生産に長い歴史を持つ国:
イギリス、アイルランド、ポルトガル、スペイン
◎無去勢オス豚生産を近年開始した国:
ベルギー、オランダ
◎去勢脱却の準備を進めている国:
デンマーク、フィンランド、ルーマニア、ハンガリー、イアリア
◎緊急性がほぼ、またはまったく感じられない国:
チェコ、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、イタリア

(2016.5月号「養豚情報」より引用)

写真/AnimalEquarity
動けないように去勢台に固定された子豚

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